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株式会社設立の方法 ― 発起設立・募集設立の違いと手続き

解説 | 公開日: | 最終更新:

制度のポイント

株式会社とは

会社法に基づく最も一般的な会社形態で、出資者は株主、経営者は取締役と呼ばれます。株主は出資額の範囲で責任を負う有限責任、所有と経営が分離しているのが特徴です。

発起設立と募集設立の違い

発起設立: 発起人がすべての株式を引き受ける(現代の主流、最短1〜2週間)。募集設立: 残りの株式を一般投資家から公募する(大規模株式会社向き)。

主な要件

  1. 定款の作成・公証人による認証(公証役場)
  2. 資本金の払込(最低1円以上)
  3. 設立登記の申請(法務局)
  4. 機関の設置(株主総会・取締役・取締役会・監査役 等)

設立の流れ

  1. 基本事項の決定(商号・本店所在地・事業目的・資本金・機関設計・発起人)
  2. 定款の作成
  3. 定款の公証人による認証
  4. 発起人の銀行口座の開設・資本金の払込
  5. 設立時取締役の選任
  6. 設立登記の申請
  7. 登記完了

費用

登録免許税: 資本金額×1000分の7(最低15万円)、定款の認証: 3万円程度、定款の印紙: 40,000円(電子定款なら0円)、約20万円〜25万円程度(自分で行う場合)。

合同会社との比較

株式会社: 設立費用が高い、社会的信用が高い、株式発行可、上場可、決算公告の義務あり。合同会社: 設立費用が安い、社会的信用がまだ低い、株式発行不可、上場不可、決算公告不要。

株式会社の決算公告

株式会社は、会社法に基づき決算公告の義務があります。事業年度末の貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)を、以下のいずれかの方法で公告する必要があります。

  • 官報に掲載(全国向け・信頼性高い)
  • 日刊新聞紙に掲載(地方向け)
  • 電子公告(会社のWebサイト 等)

決算公告の費用は、官報掲載で約7万円〜、電子公告の場合は自社で公告できるため低コストです。

決算公告を怠った場合、100万円以下の過料の対象となるため、必ず実施してください。

取締役の任期と重任

株式会社の取締役の任期は、最長2年(非公開会社では定款で最長10年まで伸長可能)、監査役は最長4年です。任期満了後は重任(再任)の登記が必要です。

任期満了の登記を怠ると、代表権のない取締役として扱われ、法的トラブルになる可能性があります。忘れずに手続きを行ってください。

発行可能株式総数と株式分割

株式会社の定款で定める「発行可能株式総数」は、実際に発行する株式数の上限です。発行可能株式総数は、株主総会の特別決議で変更できます。設立時は多めに設定(例: 1,000株)しておき、将来的な増資・株式分割に備えるのが一般的です。

また、株式分割(1株を複数に分割)も株主総会の特別決議で行うことができ、株式の流動性向上・単位株未満株の解消 等に用いられます。

株主総会の招集手続き

株式会社の株主総会は、原則として招集通知を株主に対して2週間前までに発信する必要があります(非公開会社・書面決議等を行う場合は1週間前までの短縮可)。招集通知には、開催日時・場所・議題等を記載します。

機関設計の選択肢

株式会社は、以下の機関設計を選択できます。

機関設計の選択肢
機関設計特徴
取締役会非設置会社(最小)取締役1名〜複数(取締役会なし)。中小規模の非公開会社に多い
取締役会設置会社取締役3名以上・取締役会。監査役(任意)。中堅企業向き
監査役会設置会社監査役3名以上・監査役会。取締役会の監督機能強化
会計監査人設置会社公認会計士・監査法人による会計監査。大会社・上場会社等
委員会設置会社指名委員会・報酬委員会・監査委員会。上場企業の一部
会計参与設置会社税理士・公認会計士等が会計参与として計算書類を確認

定款認証の実際

株式会社の定款は、公証人による認証を受ける必要があります。公証役場に出向き、定款を持参して認証を受けます。

  • 定款の認証手数料: 3万円程度(資本金額により異なる)
  • 定款の謄本: 数百円
  • 電子定款を利用すると、印紙税(40,000円)が不要

法人化のメリット・デメリット

個人事業主から株式会社化する場合のメリット・デメリットは以下の通りです。

法人化のメリット・デメリット
メリットデメリット
社会的信用の向上設立費用・維持コスト(決算公告等)
有限責任(出資額まで)社会保険への加入義務(社会保険料負担増)
資金調達手段の拡大(株式発行等)事務負担の増加(株主総会・取締役会 等)
税制上のメリット(法人税率の緩やかな累進)赤字でも均等割の負担
事業の継続性(後継者問題への対応)設立時の手間(定款認証・登記 等)

登記完了後の届出と手続き

設立登記の完了で「会社としての対外的な信頼」は確立しますが、事業を実際に動かすまでには、官庁ごとの届出が続きます。

  1. 法人番号の通知: 登記が完了すると、法人としての番号が通知されます。納税や各種届出に必要なため、必ず保存しておきます。
  2. 税務署への届出: 開業の届出、青色申告の承認申請、消費税関係の届出などは、設立から概ね2ヶ月以内が基準となることが多いです。事業の実態に合わせて、提出先の案内を確認します。
  3. 労働保険・社会保険の整備: 従業員を雇う場合は雇用保険・労災保険の適用手続き、役員を含む加入義務の確認を行います。手続の期限は事由ごとに異なるため、設立直後の1ヶ月で一覧化するのが効率的です。
  4. 法務局での法人印鑑登録(任意): 登記がなくても営業は可能ですが、金融機関の口座開設や不動産取引の際に参照されることがあります。

初めての設立では「登記が終われば手続は終わり」と感じがちですが、年次の手続(定時株主総会・計算書類の作成・決算公告)も1年目から始まります。設立後の最初の事業年度から「いつ・何を・どこに提出するか」を一覧化しておくと、2年目以降の運営が安定します。

いずれも提出期限が定められている手続のため、チェックリスト化して漏れを防ぐのが実務的です。個別の期限は法務省の公式サイトや各管轄の案内でご確認ください。

資本金とは

株式会社の資本金は、会社が持つ基本となる財産で、定款・株主名簿等に記載され、登記されます。会社法では資本金の最低額が定められておらず、1円から設立できるのが特徴です。ただし、設立時の登録免許税は「資本金の1000分の7」が原則で、最低15万円とされているため、実費としてこの額以上がかかります。

発起人とは

発起人は、会社の設立を目的として設立手続きを行う者です。定款に署名し、株式の引受け(発起設立の場合)や出資の履行を行います。

発起人は、個人でも法人でも構いませんが、定款への署名・印鑑証明が必要です。

資本金の使途と注意点

資本金は会社の資産であり、運転資金・設備投資・人件費等に自由に使えます。ただし、次の点に注意が必要です。

  • 資本金は原則として「返還しない」: 株主への返還は、減資・解散等の法定手続きが必要
  • 信用の目安: 取引先・金融機関が資本金を参考にするため、業種に応じた水準を考慮する
  • 最低資本金の規制: 業種によっては、資本金または純資産額の最低基準がある(貸金業など)
  • 補助金の申請: 補助金の交付要綱に資本金に関する要件がある場合がある

1円設立の考え方

資本金を少額にしても設立は可能ですが、信用・手数料面では十分な水準が求められるため、業種・事業規模に応じて現実的な額を設定するのがおすすめです。

制度の詳細は、法務省(登記)または中小企業庁の公式案内でご確認ください。

設立手続でつまずきやすいポイントと対処

定款の作成から設立登記までの流れは単純に見えますが、初めて設立する場合には書類の要件で手戻りが発生しやすい部分があります。よくあるつまずきを、手続の順序に沿って整理します。

  1. 定款の目的の不足: 事業目的を後から追加するには株主総会の特別決議と登記が必要です。将来入りうる事業をやや広めに盛り込んでおくと、事業変更のたびの登記を減らせます
  2. 発行可能株式総数の設定: 定款には発行可能株式総数の記載が必要で、設立時に定める場合の上限は発行済株式数の4倍までとされています。将来の増資を見越して余裕を持たせた設定にします
  3. 出資の払込のタイミング: 資本金の払込は設立登記の直前に行い、金融機関で払込金額の保管証明を取得します。証明書類は登記申請書類の添付に必要で、発行日が登記申請と噛み合わないと申請が通りません
  4. 登記の期限: 出資の履行から2週間以内に設立登記を済ませる必要があります。司法書士への依頼を想定しているなら、払込日の目安を先に決めておくと間に合いやすい
  5. 登記後の整備: 登記完了後に法人口座の開設・必要な各種届出が続きます。法人口座の開設は審査に時間がかかることがあるため、登記と並行して準備を進めます

また、発起人の人数が多い場合は設立手続の合意形成に時間がかかります。出資比率・役員の構成・事業目的の合意が固まっていないまま定款を認証すると、直前の変更で認証の手間が倍増します。設立時は「定款に書く前に、経営の枠組みで合意する」のが鉄則です。役員の構成や最初の事業年度の計画を1枚のメモにまとめ、それを定款・登記書類の素材にする進め方が、後悔の少ない設立につながります。

発起人の役割には責任が伴う点も押さえておきましょう。発起設立では、発起人が引き受けた株式の払込が設立の効力発生の前提になります。仮に一部の発起人が出資の履行を怠った場合、他の発起人にも引受け・払込みの義務が及ぶことがあります。加えて、出資の履行には現物出資も可能ですが、現物出資を含む設立には検査役の調査等の追加の手続が原則として必要です。金銭以外で出資する場合は、手続の分量が変わることを前提に計画を立てましょう。また、設立不成立となった場合の費用の負担分担を、発起人の間で事前に書面化しておくと、万一の際の争いを避けられます。いずれの場合も、払込の証明と登記の整合が設立の要になると心得ておくと、準備の優先順位がつけやすくなります。

設立費用の総額と内訳

本文中に散らばっている費用の情報を、手続きの順序に沿って整理します。以下は自分で手続きする場合の目安です。

設立時に必要な費用の内訳(自分で行う場合)
項目金額の目安備考
登録免許税資本金×1,000分の7(最低15万円)法務局への登記申請時に納付
定款の認証手数料3万円程度資本金額により異なる(公証役場)
収入印紙(紙の定款)4万円電子定款を利用すると不要
謄本等の実費数百円〜公証役場・法務局で取得する書類
合計(概算)約20万円〜25万円程度上記を自分で行う場合

司法書士へ登記を依頼する場合は、この実費に加えて報酬がかかります。また、設立後は決算公告(官報掲載は約7万円〜)や法人住民税の均等割など、維持のための費用が継続的に発生します。どの項目が実費で、どの項目が依頼時の報酬なのかを分けて把握しておくと、見積もりの比較がしやすくなります。

よくある質問

Q. 資本金1円でも設立できますか?

A. 可能です。ただし、資本金は取引先や金融機関が信用を判断する材料の一つで、それだけで評価されるものではありません。実務上はある程度の金額を設定する事業者が多いものの、決められた下限はありません。

Q. 定款の認証を省略できますか?

A. 発起設立で株式会社を設立する場合は、公証人による認証が原則必要です。省略できるのは、電子定款にした場合の印紙税(40,000円)であって認証自体ではありません。認証手数料は資本金額により変わるため、事前に公証役場の案内をご確認ください。

Q. 設立登記は自分で申請できますか?

A. 可能です。法務局への申請は、申請書の作成と添付書類の整備を自分で行う方法と、司法書士に依頼する方法があります。機関設計が複雑になる場合や、株式の取り扱いに特色がある場合は、専門家の確認を受ける事業者が多いです。

Q. 登記後に住所や商号を変更したらどうしますか?

A. 変更登記が必要です。登記の変更を放置すると、契約書や請求書の記載と登記内容が食い違い、取引先に不審を与える原因になります。許認可事業を営んでいる場合は、行政側への届出も必要になることがあります。

Q. 資本金はいくらにすべきですか

A. 会社法上の最低額はありませんが、現実的には「最初の1〜2年で必要な運転資金」「取引先や金融機関が信用の目安として見る水準」「登記の登録免許税(最低15万円)」の3点で判断します。小規模な事業であれば数十万円から100万円程度で設立する例が多く見られますが、業種や計画によって適正水準は変わります。迷う場合は、金融機関や専門家の意見を聞いてから決めるのが安全です。

Q. 発起人は1人でも設立できますか

A. 1人でも設立できます。発起人1人の設立では、株主総会の手続も設立時に省略される部分があり、手続そのものはシンプルになります。一方で、登記申請書類や定款の記載事項は決まっているため、書類の不備がそのまま設立の遅れにつながります。また、1人設立の場合は経営の負担が一人に集中するため、引継ぎや協力者の確保といった事業継続の方法も早めに考えておくと安心です。書類作成に不安がある場合は、司法書士への依頼を検討しましょう。

Q. 払い込んだ資本金は会社の経費に使ってよいですか

A. 資本金は会社の財産として、運転資金・設備投資・人件費等の事業用途には使えます。ただし、代表者の私的な支出は認められず、株主へ戻す場合も減資・解散等の法定手続きが前提です。あわせて、資本金の充当に伴う勘定処理は会計方針として一貫させると、決算・税務申告の手続きが整えやすくなります。

Q. 設立後に増資はできますか

A. できます。募集株式の発行という手続で、既存株主または第三者に対して新株を発行し、払い込まれた金額を資本金に計上するのが一般的です。資本金の全額を増資額にするか一部を資本準備金にするかは、取締役会等の決定に委ねられる部分があります。増資の際は登記と、場合によっては株主総会の手続が必要になるため、設立登記の手続に慣れた段階で進めるのがスムーズです。

電子定款の利点

紙の定款では収入印紙(40,000円)が必要ですが、電子定款なら不要です。作成後の添付書類の整備には手間が残りますが、設立費用を確実に抑えられる方法です。

登記前の事業開始に注意

設立登記が完了する前に実質的な事業を始めると、発起人個人に責任が及ぶ場合があります。開業の告知や採用の準備は進めても、契約の締結時期だけは登記完了後とするのが確実です。

最後に、株式会社の信頼は設立書類ではなく、その後の記録で積み上がる点にも目を向けてください。定時株主総会の議事録や取締役会の議事録を丁寧に残すことは、金融機関や取引先への説明の材料として、設立から数年後に効いてきます。設立時の機関設計と併せて、記録を残す運営を仕込んでおくと、規模の拡大後も手戻りが少なくなります。

行

執筆: 行政情報部 編集部(運営: sanbonko)

各省庁・自治体の一次情報源に基づいて、公的制度に関する情報を整理して解説しています。記事の内容に誤りや古い情報がある場合は、お問い合わせよりご指摘ください。

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