合同会社(LLC)の設立方法 ― 費用・定款・登記の手順を完全解説
合同会社の特徴
出資者: 社員(有限責任)、意思決定: 社員総会の設置は任意、経営機関: 任意(業務執行社員)、定款の認証: 不要、設立登記費用: 約10万円〜15万円、決算公告: 不要、株式発行・上場: 不可。
また、社員全員が原則として業務執行に関与でき、出資比率(持分)に応じて利益の分配を受ける点も合同会社の特徴です。
メリット
設立費用が安い、設立手続きがシンプル、経営の自由度が高い、剰余金の分配が自由、決算公告が不要。
デメリット
社会的信用が低い、資金調達手段が限定的(株式発行不可)、上場できない、税制上の不利(高所得時は個人事業主より税負担が重くなる可能性)等。
設立の流れ
- 基本事項の決定(商号・本店所在地・事業目的・資本金額・社員とその持分)
- 定款の作成(公証人認証は不要)
- 資本金の払込(銀行口座に振り込み)
- 設立登記の申請(本店所在地を管轄する法務局)
- 登記完了(概ね1〜2週間)
費用
登録免許税: 資本金額×1000分の7(最低6万円)、社員の実印登録・印鑑証明書 等で約10万円〜15万円程度(自分で行う場合)。
設立後の主な手続き
税務署・都道府県税事務所・市区町村への届出、社会保険の手続き(従業員雇用時)、労働保険、銀行口座の開設、会計帳簿の整備、決算・法人税の申告 等。
合同会社の決算公告は不要
合同会社の特徴として、決算公告の義務がないことが挙げられます。株式会社は決算公告(事業年度末の貸借対照表を官報等で公告)が必要ですが、合同会社にはこの義務がないため、公告の手間・コストが不要です。
一方、合同会社も法人税の確定申告は必要です。事業年度終了後2ヶ月以内に、法人税・消費税・法人住民税・法人事業税の申告書を税務署・都道府県税事務所に提出します。
合同会社の役員と機関
合同会社には、業務執行社員・代表社員・監事を置くことができますが、いずれも必置ではなく、定款で自由に決めることができます。
- 業務執行社員: 会社の業務を執行する社員(複数可)
- 代表社員: 会社を代表する社員(対外的に会社を代表)
- 監事: 業務執行を監査する者(任意設置)
合同会社には「取締役」「取締役会」「監査役」「株主総会」の設置は不要で、定款で自由に機関設計を決められます。
合同会社の税金
合同会社の法人税率は、普通法人と同じで、所得金額に応じて段階的に上昇します(2026年現在)。
| 区分 | 法人税率(所得金額800万円以下) | 法人税率(所得金額800万円超) |
|---|---|---|
| 資本金額1億円以下の普通法人(中小企業) | 約15% | 約23% |
| 資本金額1億円超の普通法人 | 約23% | 約23% |
※ 法人税率は、地方税・復興特別所得税を含めず、本体税率のみを記載しています。実際の税率は、法人住民税(均等割+法人税割)・法人事業税・地方法人税・特別法人事業税 等を加算して計算します。
合同会社と個人事業主の税負担比較
合同会社化のメリット・デメリットの判断は、所得税率(最大55%) vs 法人税率(約15〜23%)の比較が重要です。
- 所得900万円以下: 個人事業主の方が税負担が軽いケースが多い(所得税の累進税率)
- 所得900万円超: 合同会社の方が税負担が軽いケースが多い(法人税率の累進が緩やか)
- 個人事業主の事業税: 事業主控除290万円後の事業所得に5%が課税
- 合同会社の法人事業税: 所得に応じて税率が異なる(所得400万円超で7%程度)
ただし、法人化には社会保険の加入義務(法人の役員は原則加入)等の社会保険料負担増があり、税負担の軽減と相殺される場合があります。
合同会社化の手続き(個人事業主からの移行)
個人事業を営んでいた方が合同会社を設立する場合、以下の手順になります。
- 現物出資をする資産の評価(税理士・公認会計士に相談)
- 合同会社の設立登記の申請
- 個人事業の開業届の取り下げ・事業の廃止届の提出
- 個人事業の棚卸資産・固定資産の引継ぎ(決算書の作成)
- 合同会社としての開業届の提出(税務署・都道府県税事務所)
- 個人事業の所得税の確定申告(事業廃止年の分)
合同会社の活用に向いている業種
- コンサルティング業・IT/Webサービス業・デザイン業・コンテンツ制作業
- 不動産賃貸業・個人レッスン系事業(ヨガ・音楽 等)
- 小規模な物販・卸売業
- 1〜数名の少数精鋭で運営する事業 等
大規模資金調達・上場・M&A 等を想定する事業は、株式会社の方が向いています。
社員の権利と義務
- 業務執行: 社員は原則として会社の業務を執行できる(定款で限定することも可能)
- 持分の譲渡: 持分は原則自由に譲渡できるが、定款で制限するのが一般的
- 責任: 社員は原則として会社の債務を有限責任で負う(出資額が上限)
- 業務執行社員: 特定の社員だけを業務執行社員とする定めも可能
定款の変更
合同会社の定款変更は、社員の過半数(または定款で定める多数決)の同意で行えます。定款の変更があった場合は、2週間以内に登記が必要です。
- 社員の合意(過半数以上)を取得
- 定款の変更内容を決定(変更条項を明記)
- 定款変更の登記申請(2週間以内)
定款変更は「社員の合意さえあればよい」という簡便さがある一方、合意の記録が雑だと後の争いの原因になります。変更の議事は、誰が・いつ・どの内容に賛成したのかを残すのが基本で、書面決議であれば各自の同意書を取り、対面で決める場合は議事録を残します。また、登記の際には変更前と変更後の内容が対照できるようにするため、変更条項を書き起こした文書を用意しておくと手続きが進めやすくなります。変更が必要になった理由(事業範囲の拡大・本店移転・商号の変更など)も文書に残しておくと、銀行や取引先への説明で役立ちます。
社員の変更(加入・退社)
新しい社員の加入・既存社員の退社があった場合は、持分の移転・変更を登記します。
- 社員の加入: 定款で入社の条件を定める(全員同意とすることが多い)
- 社員の退社: 退社により持分が消滅する(残余財産の分配等の取り扱いを定款で定める)
- 持分の譲渡: 譲渡制限を設けている場合は、全員同意等の手続きが必要
社員の変動は、事業の継続と資金の安定に直結する場面です。新たな社員の加入は出資による資金の増加を意味する一方、退社は出資の持ち出しを意味するため、時期と金額の見通しを社員間で共有してから手続きに入るのが安全です。また、加入に伴い業務の分担が変わる場合、その内容を社員総会の決議として記録しておくと、後の権利関係の確認が容易になります。持分の比率が変われば、利益配分や決議の多数決の計算にも影響するため、書面の整理は手続きの中心として扱ってください。
株式会社との主な違い
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 機関 | 株主総会・取締役等 | 原則、社員全員(取締役会不要) |
| 決算公告 | 原則義務 | 義務なし |
| 設立コスト | 登録免許税15万円以上・定款認証手数料等 | 登録免許税6万円以上 |
定款設計のポイント
合同会社は「自由度が高い」分、社員間のルールを定款で明確にすることが大切です。特に持分の譲渡制限・業務執行の分担・利益配分の方法は、設立時に決めておくことをおすすめします。
制度の詳細は、法務省(登記)の公式案内でご確認ください。
変更登記と届出の実務の整理
合同会社の運営では、定款や社員の構成を変える場面が複数回訪れます。登記と各種届出を別々のタイミングで要求されるため、あらかじめ対応の一覧を手元に置いておくと漏れが減ります。
- 定款変更・商号変更・本店移転: 原則、効力発生から2週間以内に登記します。登記の添付書類には社員の過半数の同意を示す議事録等が必要です
- 社員の変更(加入・退社): 持分の変動を登記します。退社した社員の債務に対する責任の扱いや、持分の評価額が争いにならないよう、退社時に書面で取り決めておくと安心です
- 代表の変更: 代表社員を定款や社員総会の決議で定めている場合、代表社員が変わったら登記が必要です。あわせて税務署等へ、代表者変更の届出を提出します
- 資本金・出資の変更(増資・減資): 社員総会の決議と登記のほか、税務上の処理(持分の変動)が発生するため、実施前に専門家へ確認するのが安全です
- 事業内容の変更: 定款の目的の変更は登記で対応し、業種によっては許認可・届出の再確認が必要です。法人成り後に免税事業者の要件が崩れないかも確認します
登記手続きは法務局の窓口や郵送・電子申請で行えますが、初めての変更では添付書類の不備で再提出になるケースが少なくありません。登記事項証明書の現在の内容と、変えたい内容の差分を先に書き出し、その差分に対応する根拠文書(議事録・同意書・契約書)をそろえてから申請すると、手戻りが減ります。登記が完了したら、登記事項証明書を取り直して、銀行や取引先への変更連絡に使うのが一連の流れです。
社員変更は「その日のうち」を意識する
社員の退社・加入は会社の構成員の変動であり、登記の他に銀行の名義人届の内容・代表者印の管理・給与振込の締結手続きにも波及します。退社の日から順に、登記・銀行・税務署の届出をチェックリスト化しておくと対応漏れが防げます。
設立手続きでつまずきやすいポイント
合同会社の設立は株式会社より簡素ですが、登記申請の段階で書類の不備による補正が発生すると、その分だけ開業が後ろにずれます。実務では次の5点を申請前に確認しておくと、手戻りが減ります。
- 商号の重複: 同じ本店所在地に同一の商号は登記できません。似た商号がある場合は法務局で照会し、屋号や英字表記の組み合わせで区別します。
- 事業目的の書き方: 目的は現在の事業だけでなく、数年先に想定する事業まで含めて記載します。狭すぎると事業拡大のたびに定款変更(原則2週間以内の登記)が必要になります。
- 本店所在地の使用権限: 自宅やシェアオフィス・バーチャルオフィスを本店にする場合、登記に使用できるかを契約時に確認します。登記利用不可のプランもあるため、契約前に規約の確認が必要です。
- 払込のタイミングと記録: 資本金の払込は設立登記の前に完了している必要があり、払込の事実を示す書面(通帳の写し等)が登記の添付書類になります。払込口座・金額・日付の記録を揃えておきます。
- 社員の印鑑証明書: 登記申請には社員の印鑑証明書を添付します。発行から日数が経過したものは避け、申請の直前に取得するのが実務の基本とされています。
不明点は、本店所在地を管轄する法務局の登記相談窓口で確認できます。申請書は公式の様式に沿って作成すると、記載漏れによる補正を減らせます。
よくある質問
Q. 合同会社は法人ですか?
A. はい、合同会社は会社法に基づく法人で、法人格を持ちます。法人税の課税、社会保険の加入義務、有限責任 等は株式会社と同等です。
Q. 合同会社でも銀行融資は受けられますか?
A. 受けられます。日本政策金融公庫・商工中金・地方銀行・信用金庫 等で融資審査を受けられます。融資審査では事業計画・財務状況・代表者の信用等が重視されます。
Q. 合同会社の資本金は後から増減できますか?
A. 増資は可能(社員総会の特別決議)。減資は手続きが複雑で、債権者保護の手続き等が必要です。
Q. 社員が1人の合同会社は運営しやすいですか
意思決定が速く、手続きが簡素な点は運営しやすい面です。一方で、持分の承継や退社の際の取り扱いが整備されていないと、後継者に困難が生じます。1人社員でも定款に持分譲渡の制限や承継時の取り扱いを明記しておくと、将来の設計がしやすくなります。
Q. 退社した社員から「退職金」や持分の対価を払う必要がありますか
持分の譲渡で退社する場合は、当事者間の契約で譲渡対価を定めるのが一般的です。一方、任意退社(承継人を持分を引き取らせない形)の場合、定款に残余財産分配等の定めがなければ、退社により持分が消滅する扱いになり、対価が発生しないことがあります。どの形態かで税務上の取り扱いも変わるため、退社の方法と評価額は専門家に確認して進めてください。
Q. 定款で代表社員を定めていないと、外部との契約はどうなりますか
原則として各社員が業務執行の権限を持つため、外部から見ると誰が会社を代表するかが分かりにくくなります。実務上は、代表社員を1名定めるか、業務執行の分担を定款または社員総会の決議で明確にしておくと安心です。また、契約の相手方から登記事項証明書の提出を求められる際も、代表者の記載があったほうが説明が簡単です。
Q. 社員の持分を平等にしていたら、意見が対立した場合はどうなりますか
定款に特別の定めがなければ、原則として1持分1決議の考え方で多数決が進みます。ただし、持分が半々の場合は過半数が成立せず、意思決定が止まってしまう可能性があります。この状態を避けるには、定款で議決方法を定めるか、代表社員に業務執行の権限を集中させる設計、または第三者を交えた調整のルールを先に決めておく必要があります。紛争になりやすい段階(事業拡大・資金投入・退社の話が出た時点)より前に、社員間でルールを確認しておくことが合同会社運営の大事な実務です。
Q. 合同会社から株式会社へ組織変更できますか
できます。組織変更の手続きを経て株式会社へ移行する方法が定められており、社員総会の決議と登記、株式の取り扱いの設計、必要に応じた定款の全面改定など、通常の変更登記より手続きが重くなります。資金調達や株式報酬制度を検討し始めた段階で、専門家に移行の要否と日程の見通しを相談することをおすすめします。
合同会社(LLC)とは
2006年5月の会社法施行により認められた「持分会社」の形態で、出資者は「社員」と呼ばれます。有限責任を負い、合同会社ならではの柔軟性・低コストでの設立が可能です。