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勤怠管理と36協定の基礎(中小企業向け整理)

解説 | 公開日: | 最終更新:

制度のポイント

勤怠管理の基本

労働基準法では、労働時間の適正な把握が事業主の義務とされています。勤怠管理とは、従業員の始業・終業時刻・休憩・残業時間等を正確に記録する仕組みです。

  • タイムレコーダー・勤怠システム: 客観的な記録ができる手段で管理する
  • 自己申告のみの管理は原則不可: 労働時間を正確に把握する必要がある
  • 記録の保存: 労働者名簿・賃金台帳・勤務記録等を5年間保存する

36協定(三六協定)とは

労働基準法では、原則として1日8時間・週40時間が労働時間の上限です。この上限を超えて労働させるには、時間外・休日労働に関する協定(36協定)を労使で締結し、労働基準監督署に届出る必要があります。

  1. 労使で協定を締結する(労働者の過半数代表の意見書を添付)
  2. 労働基準監督署に届出する
  3. 協定の内容(時間外労働の上限・休日労働の必要性等)を定める
  4. 協定期間(1年以内の複数年制も可)を定める

時間外労働の上限規制

2019年の働き方改革関連法により、時間外労働の上限が法律で定められました。

  • 原則: 月45時間・年360時間
  • 特別条項付き協定でも、年720時間以内・単月100時間未満(休日労働を含む)・連続2〜6か月平均80時間以内等の上限あり

上限を超えると、罰則の対象になるため、勤怠記録を基に時間外労働の実態を定期的に確認することが大切です。

賃金・残業代の計算

  • 時間外労働: 通常賃金の1.25倍以上の割増賃金
  • 休日労働: 1.35倍以上の割増賃金
  • 深夜労働(22時〜5時): 0.25倍以上の割増を加算

36協定の届出漏れが最大のリスク

36協定を締結せずに残業をさせると、労働基準法違反(刑事罰・指導)の対象になります。勤怠管理の整備と36協定の届出を、雇用後に速やかに行いましょう。

制度の詳細は、厚生労働省の労働基準法に関する案内または労働基準監督署でご確認ください。

手続きの全体像と期限

36協定を中心とした労働時間関係の手続きは、職場ごとに一連の流れとして整えると実務が安定します。全体像は次の通りです。

  1. 過半数代表の選定(労働組合または労働者の過半数を代表する者)と、その手続きの記録を作成する
  2. 協定締結の意見書を取り付け、時間外・休日労働の業務の種類・人数・協定期間・上限時間を定めて協定を締結する
  3. 締結した協定を労働基準監督署へ届出る(様式は第9号・第10号等が用意されている)
  4. 職場の勤怠実績を月次で点検し、上限時間の管理表を作成して超過の兆候を早期に把握する
  5. 協定の有効期間が切れる前に更新の協議と届出を済ませる

届出の期限は、時間外労働を開始する前が基本です。協定の締結が後回しになると、すでに発生した時間外労働について協定の根拠が無い状態となり、指導の対象になり得ます。新規事業の立ち上げ期や繁忙期の見込みが立った時点で、協定を先に整えるという順番を事業計画側に組み込んでおくと安全です。また、協定期間の終了後の空白期間も無許可の状態と同じになるため、更新のスケジュールを労務管理の年間計画に明記しておきましょう。

特別条項の運用メモ

特別条項付き協定では、労働者への通知や署名・押印で意見を確認する手続きが求められます。緊急事態に相当する理由や、健康確保措置の実施方法も協定文書として整えるため、活用する場合は文書化の手間を計画に組み込んでおきましょう。

中小企業で起こりやすいミスと対処

管理監督者に割増賃金が不要だと思い込んでいる

管理監督者は労働時間に関する規制の適用が除外される場合がありますが、その判断は職務の権限・責任・待遇の実態に基づくため、肩書きだけで除外できるわけではありません。実態と名目がずれた運用は指導の対象になるため、対象者の範囲を毎年の人事評価の際に見直す体制が役立ちます。

深夜労働と休日労働の計算を混同している

休日の勤務が22時をまたぐ場合、割増率はそれぞれ区分ごとに加算されます。勤怠システムの設定が正しいかを、賃金台帳の計算例と突き合わせて定期的に確認することが、給与計算のミス防止につながります。

固定残業代の精算がされていない

固定残業代を設定している場合、実労働時間が設定の残業時間を超えた分の差額を精算する仕組みが必要です。勤怠記録から超過分を毎月確認する手順を就業規則に組み込んでおくと、算定の漏れを防げます。

年次有給休暇の管理が勤怠から切り離されている

時間外労働の削減と有給休暇の取得促進は一体として管理するのが実務の流れです。年5日以上の取得義務に対応するため、取得状況を勤怠システムで一元管理し、取得が少ない人への時期指定の運用を整えておきましょう。

よくある質問

Q. 36協定の届出は毎年必要ですか。

A. 協定の有効期間が終了するたびに更新が必要です。協定期間は複数年に設定できる場合もあるため、自社の協定がいつまで有効なのかを文書で確認し、更新の協議を期限の2〜3か月前には始めておくのが安全です。上限規制の対象となる月の実績管理も、協定の期間と同じくれて管理すると見落としが減ります。

Q. 残業をさせない社員だけの職場なら、協定は不要ですか。

A. 時間外労働・休日労働を一切させないのであれば、協定は不要です。ただし、繁忙期やお客様対応で実際に時間外が発生しやすい職場では、実態を先に点検するのが現実的です。勤怠記録を見て月次の時間外の発生傾向を確認し、発生が見込まれる時期に合わせて協定を整備する流れにすると、急な繁忙期にも対応できます。

Q. フレックスタイム制を採用している場合も勤怠管理が必要ですか。

A. フレックスタイム制でも、精算期間ごとの総労働時間の管理は必要です。清算期間内の所定労働時間の総数と実際の労働時間を比較し、過不足を翌月以降に繰り越すか精算する運用を整えます。そのうえで時間外労働が発生した場合の扱いは、36協定との関係で別途整理が必要になるため、制度の導入時期に一連の手続きを確認しておくと安心です。

勤怠管理の整備は、残業代の計算ミスを防ぐだけでなく、経営判断のための労務コストの見える化にもつながります。月次の時間外実績を部署別に集計し、発生原因を業務量の偏りや人員配置と照らし合わせて振り返る習慣がある職場では、上限規制への対応と業務改善が同時に進みます。労働基準監督署の指導を避けるための帳簿整備という消極的な目的だけでなく、自社の働き方をデータで点検する仕組みとして勤怠管理を位置づけておくと、中小企業でも投資対効果の高い運用が可能になります。

記録の保存期間の見直しも忘れずに

労働関係の帳簿の保存期間は法令の改正により延長が予定・実施されている分野があるため、自社の保存手順を年度初めに確認しておきましょう。紙での保存から電子での保存への移行を検討する場合は、保存要件に適合する方式かを確認してから切り替えます。

なお、勤怠システムの導入後も、実態の運用が規程と合致しているかの点検を続けることが重要です。例えば、打刻漏れが続く従業員への対応、出張や在宅勤務時の記録方法、みなし労働時間制の適用対象の確認など、制度と現場の接点で生じる疑問は毎年のように出てきます。職場の労務管理担当者が、これらの疑問を月次の点検会議に持ち込む手順を整えておけば、個別の判断を溜め込まずに済み、結果として法令遵守の精度も上がります。

Q. 過半数代表は誰でも務められますか。

A. 労働者の過半数を代表する者には、管理監督者にあたる方や人事・労務を直接担当する立場の方は適さないとされています。票の多い方というより、労働者の全体的な利益を代表する立場に適する方を選ぶ考え方が基本です。選定の理由を簡単でも文書で残しておくと、後日の確認にも対応できます。

Q. 協定が複数年で有効な場合でも、何か毎年やることがありますか。

A. 届出は協定期間中で新たに必要とされない場合でも、上限時間の月次点検・特別条項を利用した場合の手続き・労働者への周知など、毎年実施すべき運用は残ります。協定の文書を年度初めに読み返し、上限の管理表と並べて確認する手順を毎年の労務管理計画に組み込んでおくと、空白期間や届出漏れの心配が減ります。

締結から運用までのチェックリスト

ここまでの内容を、年度初めと月次の点検で使えるチェックリストにまとめます。

36協定関連の手続きと時期の整理
手続き時期・期限
過半数代表の選定と手続きの記録協定の締結前
協定の締結(意見書の取り付け)時間外労働を開始する前
労働基準監督署への届出時間外労働を開始する前
勤怠実績の月次点検・上限時間の管理表の作成毎月
協定の更新の協議・届出有効期間が切れる前(協議は期限の2〜3か月前から)
  • 協定の有効期間と上限時間を、年度初めに読み返したか
  • 特別条項を利用した場合の労働者への通知・意見確認の手続きを記録したか
  • 勤務記録等の帳簿の保存(5年間)の運用を確認したか
  • 管理監督者の範囲を、実態に基づいて見直したか
  • 固定残業代の超過分の精算を毎月確認しているか
  • 年次有給休暇の取得状況を勤怠管理とあわせて確認しているか

協定は「締結して終わり」ではなく、有効期間の管理と月次の実績点検まで含めて1つの運用です。年度初めに協定文書と管理表を並べて点検する時間を予定に入れておくと、更新漏れと上限超過の両方を防ぎやすくなります。

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執筆: 行政情報部 編集部(運営: sanbonko)

各省庁・自治体の一次情報源に基づいて、公的制度に関する情報を整理して解説しています。記事の内容に誤りや古い情報がある場合は、お問い合わせよりご指摘ください。

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