飲食店営業許可の申請方法 ― 保健所への届け出と必要な準備
飲食店営業許可とは
飲食店を営業するには、食品衛生法に基づき、施設の所在地を管轄する保健所から飲食店営業許可を受ける必要があります。無許可営業は6ヶ月以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられることがあります。
営業許可取得までの流れ
- 出店場所の確保・テナント契約・内装工事
- 事前相談(工事前に保健所へ)
- 内装工事(保健所の指導に基づく)
- 食品衛生責任者の選任(調理師資格者等)
- 営業許可申請書の提出
- 施設の検査(保健所職員による実地検査)
- 営業許可証の交付
施設基準の主なもの
床・壁・天井の材質、換気、給水・給湯、照明、便所、手洗い設備、冷蔵・冷凍設備、廃棄物容器 等。詳細の基準は営業形態・地域により異なるため、保健所の事前相談でご確認ください。
食品衛生責任者の選任
調理師・製菓衛生師・栄養士の資格者、または食品衛生責任者養成講習会修了者(各都道府県で開催)が必要です。
食品衛生責任者は、食品衛生法に基づき、飲食店・食品製造業等で衛生管理を行う者で、施設ごとに置くことが望ましいとされています(営業許可の要件として置くことが求められる場合が多い)。食中毒防止・温度管理・清掃等、現場の衛生管理を実際にリードする役割です。食品衛生責任者が休む場合に備え、他の資格者を置く体制が望ましいとされています。
必要書類
営業許可申請書、営業設備の大要・配置図・平面図、食品衛生責任者の資格証の写し、法人登記簿謄本、住民票の写し、許可申請手数料(現金) 等。
費用
営業許可申請手数料: 16,000円程度(地域により異なる)、食品衛生責任者養成講習会: 10,000円程度、水質検査(井戸水利用の場合): 10,000円程度。
HACCPに沿った衛生管理
2021年6月の食品衛生法改正により、原則として全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されています。
営業許可と営業届出の違い
食品衛生法に基づく営業には、「営業許可」が必要な業種(32業種)と、「営業届出」が必要な業種(全34業種〜)があります。飲食店営業は「営業許可」が必要で、許可の取得前に営業を開始すると無許可営業として罰則対象となります。一方、令和3年6月の食品衛生法改正により、営業届出業種(例: 野菜果物販売・喫茶店営業 等)は保健所への届出のみで営業可能になりました。
営業許可の取得に要する日数(目安)
営業許可の申請から許可証の交付までには、2〜4週間程度かかりますが、保健所・申請内容・事前相談の進捗により前後します。出店日が決まっている場合は、最低でも2〜3ヶ月前から準備を始めることをおすすめします。
食品衛生責任者の講習
食品衛生責任者になるには、以下のいずれかの資格が必要です。
- 調理師・製菓衛生師・栄養士の資格(資格証の写しで申請可)
- 各都道府県で開催される食品衛生責任者養成講習会の修了(講習は1日・約6時間・10,000円程度)
食品衛生責任者は、営業所に常勤している必要があり、他の事業所との兼任は原則不可です。
養成講習会の申込みは、都道府県または市(政令市)の食品衛生担当部門・指定団体(食品衛生協会等)の窓口で行い、受講後に食品衛生責任者資格証明書が交付されます。講習では、食品衛生法と関連法令、食中毒の予防、施設・設備の管理、従業員の衛生管理などが主なテーマです。
講習の日程は地域や時期により枠が埋まりやすいため、申込から受講・資格証明書の交付まで数週間程度を見込んでおくと安心です。複数の施設を営む場合や、従業員にも資格を取らせたい場合は、集団での受講に対応している自治体もあるため、窓口に相談すると負担を減らせます。自治体によっては、講習に相当する資格・経歴により講習が免除・一部省略される場合があるため、申込前に窓口で確認してください。
HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の実務
2021年6月の食品衛生法改正により、原則として全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務化されました。HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害要因分析重要管理点)」の略で、原材料の受入から最終製品までの各工程で危害要因を分析し、重要管理点を継続的に監視・記録する衛生管理手法です。
飲食店では、以下のいずれかの方法でHACCPを運用します。
- HACCPの考え方を取り入れた衛生管理: 小規模な飲食店(従業員10人程度以下)向け。重要管理点を限定した簡略版。
- HACCPに基づく衛生管理: 一定規模以上の事業者向け。コーデックス委員会が定めた7原則12手順に沿った本格的なHACCP。
営業開始後に必要な届出・報告
- 営業開始届: 営業許可取得後、営業開始前に保健所に届出
- 営業実績報告: 毎年度、保健所に営業実績を報告(事業年度終了後)
- 変更届: 営業者の氏名・住所・営業所の構造設備・食品衛生責任者の変更 等
- 食品表示: アレルゲン・消費期限・原材料名等の表示(食品表示法)
- 食品リコール情報: 自主回収の場合は行政への報告義務
参考になる公的窓口
- 営業所の所在地を管轄する保健所(事前相談・申請窓口)
- 各都道府県の食品衛生協会(食品衛生責任者養成講習会・営業者のための情報提供)
- 厚生労働省 公式サイト(食品衛生関連)
申請でつまずきやすい点と補正のポイント
飲食店営業許可の申請は、書類の形式そのものより、「保健所が確認する視点」で事前相談を済ませておくかどうかで進みやすさが変わります。
- 配置図・平面図の記載不足: 設備の寸法・位置・機種、床・壁・天井の仕上げ、手洗い設備の位置など、施設基準と照合できる情報が漏れていると補正になります。
- 食品衛生責任者の要件確認: 資格証の有効性、営業所での常勤という実態との一致、複数店舗での兼任の可否を事前に確認します。
- 営業種別の選択: 主たる営業の内容(喫茶・酒類・持ち帰り 等)により、届出で足りる場合と許可が必要な場合が分かれます。看板や商号のイメージではなく、実際の調理工程・提供形態で区別します。
- 既存テナントの設備のまま出店する場合: 前営業者の許可と自店の許可は別物です。設備の現況が現行の基準に合っているか、工事着手前に保健所で確認します。
いずれの項目も、図面を持参して保健所の担当者に現地確認してもらうことで、検査当日の差し戻しを大幅に減らせます。なお、申請書の様式は自治体によって差があるため、ネット上で見つかった書式をそのまま使わず、管轄の保健所が配布する書式を入手するのが確実です。図面の例示書式も同様で、独自フォーマットでは受理に手間取ることがあります。
食品衛生管理者との違い
| 名称 | 根拠 | 対象施設 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | 食品衛生法 | 飲食店・食品製造・加工等の広範な施設 |
| 食品衛生管理者 | 食品衛生法 | 乳・乳製品・添加物・肉製品等の製造施設 |
食品衛生管理者は、栄養士・調理師等の資格を持つ者がなれる場合があり、乳製品等の製造施設では置くことが義務付けられます。
根拠法令と制度の位置づけ
食品衛生責任者の制度は、食品衛生法を根拠としています。食品衛生法は、食品の安全性の確保を目的とし、事業者には「食品等事業者の責務」として、食品等を提供する際に必要な情報を提供し、自主検査や衛生管理の実施などが求められています。食品衛生責任者は、こうした衛生管理を現場で担う者として、営業施設ごとに置くことが定められています。
制度の性格を整理すると、次のようになります。
- 国家資格ではなく、公的な講習の修了による資格: 試験に合格するのではなく、都道府県・政令市が実施または委託する養成講習を受講して修了することで資格を得る
- 資格の有効期限は原則ない: 一度資格を得れば失効しないが、衛生管理の知識は法令改正で変わるため、定期的な知識の更新が望まれる
- 自治体ごとの運用の差がある: 講習の実施方法・受講料・申込方法は自治体ごとに異なり、引っ越しや事業所の移転で別の自治体の手続が必要になる場合もある
なお、講習の実施方法は対面だけでなく、Eラーニングやオンラインでの受講が広がっており、多忙な開業準備中の事業者でも受講しやすくなっています。ただし、受講にあたっては本人確認や身分証の準備が必要な場合があるため、申込前に必要なものを確認しておくと手続きが一度で済みます。
営業許可申請と配置の実務
食品衛生責任者は、営業許可申請の場面で名簿や資格証明書の写しとして求められることが一般的です。申請から営業開始までの流れの中で、責任者の配置をどう扱うかを整理します。
- 資格者を決める: 経営者自身が受講するのが最もシンプル。従業員に任せる場合は、その者が常勤として在籍する体制を整える
- 講習を受講し、資格証明書を受け取る: 証明書は紛失に備えてコピーを取り、営業施設に掲示または保管する
- 営業許可申請時に添付: 申請書とともに、責任者の資格証明書の写し等を添付する
- 営業開始後の配置の維持: 責任者が退職・移動する場合は、速やかに後任の資格者を確保し、管轄の保健所に変更を届け出る(自治体により手続の要否が異なるため確認)
- 立入検査・HACCP対応: 営業後は保健所の立入検査があり、衛生管理の状況とともに、責任者が現場を理解しているかが問われる
なお、小規模な飲食店では「経営者が自分で責任者講習を受けて、現場の衛生管理も自分で行う」のが現実的な構成です。複数店舗を展開する場合や、チェーン展開を想定している場合は、店舗ごとに資格者を配置できるよう、複数人で講習を受講しておくと、シフト変更や退職時の対応が容易になります。
データで見る飲食・食品分野の行政処分
当サイトが収集した行政処分5,362件のうち、都道府県によるものは387件(全体の7.2%)で、主な処分理由の例には食品衛生法違反が含まれています。飲食店営業許可は保健所(都道府県・政令市)の所管で、営業停止や許可取消しも制度上あり得るため、衛生管理と法令遵守の両面が事業継続に関わります。
- 都道府県による処分: 387件(全体の7.2%)。主な処分理由の例として食品衛生法違反が挙げられています。
- 業界別の集計(推定値を含む): 飲食・風俗は280件。飲食店営業許可の所管は保健所で、営業停止・許可取消しの制度は本記事で解説したとおりです。
※当サイトが各省庁・機関の公表資料をもとに収集・分類した行政処分5,362件(2005〜2026年・14省庁・機関)の独自集計値です。業界別・年度別・地域別・再発率は推定値を含みます。集計方法は統計レポート・データ公開ページに記載しています。
よくある質問
申請と開業準備を検討している方から、よく寄せられる質問をまとめました。保健所への事前相談は自由に、何度でも行えます。図面が未完成の段階でも「当面の設備構想」として確認を受け付けてもらえることが多く、構想段階からの相談を惜しまないことが、検査一発合格への近道になります。
Q. テイクアウトやデリバリー中心の店舗でも許可は必要ですか?
A. 営業の内容により区分が異なります。喫茶店営業など、営業届出で足りる場合と、製造や調理の内容によって許可が必要になる場合があるため、開業予定のメニューと調理工程を保健所に確認してください。
Q. 調理師の資格がなくても開店できますか?
A. 調理師資格は必須ではありません。要件は食品衛生責任者の選任で、調理師・製菓衛生師・栄養士等の資格者、または養成講習会の修了者を1名配置できれば足ります。
Q. 2店舗目を開く場合はどうすればよいですか?
A. 店舗ごとに営業許可が必要です。食品衛生責任者も営業所ごとに選任するため、1名を複数店舗で兼任することは原則できません。新店舗の所在地を管轄する保健所で、改めて事前相談を行ってください。
Q. 許可を取得した人の名義を変えられますか?
A. 営業者の変更は許可のまま名義を移す手続ではなく、改めて許可の手続が必要とされるのが原則です。会社の組織変更や親族への名義変更の場合も、管轄の保健所で手続きの区分を確認してください。
Q. 従業員が食品衛生責任者になることはできますか
A. できます。資格の要件は本人が養成講習を修了すること(または食品衛生管理者等の資格を持つこと)であり、経営者本人である必要はありません。ただし、責任者は実際にその施設の衛生管理に関与できる立場であることが望ましいため、まったく現場に関わらない者が名義だけを貸す形は避けるべきとされています。退職・異動で資格者が不在になる場合は、後任を早めに確保し、管轄の保健所に変更の連絡をするのが実務上の基本です。
Q. ネット通販で食品を販売する場合も資格が必要ですか
A. 営業の形態によります。飲食店営業や、食品の製造・加工・販売を営業として行う場合は、自治体の条例に基づく営業許可・届出の対象となり、施設ごとの食品衛生責任者の配置が求められるのが一般的です。一方、包装済みの食品をそのまま取り扱う軽易な取引など、許可・届出の対象外となる形態もあります。自分の事業形態がどれに該当するかは、営業を始める前に管轄の保健所へ相談するのが確実です。
検査でよく指摘される設備
手洗い設備の水栓(手や腕に触れない形式か)、換気の構造、備品の表面の仕上げ、清掃状況の記録などは検査当日に見られやすい項目です。事前相談でチェックリストをもらっておくと安心です。
開業後も、保健所との接点は続きます。営業実績の報告や変更届の提出は、事業年度ごとの定例作業です。開業直後に手続の担当者と提出物を一覧にしておけば、繁忙期に届出が滞る事態は避けられます。衛生管理の記録は、万一の食物中毒等の疑いが起きた際にも自分を守る資料になるため、日々の業務の中に組み込むのがおすすめです。
営業許可取消のリスク
営業許可は、以下の事由に該当すると取り消されることがあります。
営業許可の取消は事実上の「事業継続不可能」を意味するため、衛生管理・法令遵守の徹底が重要です。